別役実とは?
日本の不条理劇を確立した第一人者で、電信柱のある舞台で名前を持たない人間たちが不思議な出会いをする独特の作風で知られた劇作家。2020年3月没。
赤塚不二夫のギャグマンガ『天才バカボン』に設定を借りた原作者公認の二次創作戯曲『天才バカボンのパパなのだ』を1978年に発表。
『天才バカボンのパパなのだ』別役実戯曲集あとがきより
《天才バカボンのパパなのだ》は、言うまでもなく、赤塚不二夫氏の「天才バカボン」から材料を得たものである。私はかねてから、氏の「天才バカボン」には独自のドラマツルギーがあると考えていた。もちろん単純なものではないが、敢て一口に言ってしまえばこういうことになるだろう。先ず本筋に関わる基本的な葛藤線が、本筋と関係のない補助的な葛藤線に枝わかれしてゆく。本来ならこれはあくまでも補助的な葛藤線なのであるから、我々は終始、これはやがてカーブを描いて基本的な葛藤線に収束されてゆくであろうことを期待しているのであるが、そうはいかない。逆に、こちらの方が基本的葛藤線なのではないかと思われるほど、それが維持され、強調され、しかし、我々がそう思いはじめたとたん、それがまた、更に補助的な葛藤線に枝わかれしてゆく。
このようにして、基本的葛藤線が補助的な葛藤線へ、そしてまたそれが更に補助的な葛藤線へと限りなく枝わかれをしてゆき、遂に基本的葛藤線に立戻ることなく、とめどもない迷路に踏みこんでゆく、というのが、氏の本来のドラマツルギーなのである。言ってみれば私は、このドラマツルギーを借りたということに他ならない。葛藤線を維持することにおいてこれは近代劇的な手法であるが、同時に、それをそうしたまま近代劇的な葛藤の論理を、破壊するための手法にもなり得ると、私は考えたのである。
別役実
別役実著「天才バカボンのパパなのだ 別役実戯曲集」(三一書房 1979年) より引用
『天才バカボンのパパなのだ』あらすじ
電信柱の近くの路上に引っ越してきた、署長と巡査のいる派出所。
そこへバカボンファミリーが次々と訪れる。
雨が降っていないのに傘を差しながらやってきちゃったバカボン。
そこへちょうど通りかかった第一声からおかしいバカボンのママ、ネコになったと思い込んでるパパ、レレレのおばさん、迷惑行為の相談に来たもののいちばんの惨劇を巻き起こす女1…。
人が増える度にまったく問題でないことが問題になり、まったく揉める必要のない揉め事がただただ広がっていき…。
見どころ
難解な別役実の戯曲に、実力派俳優4人と演劇初挑戦となる芸人4人が、玉田真也演出のもと挑みます。
男役のメトロンズメンバーも含めた全員が一丸となって奮闘する姿も要チェックですので、是非とも劇場でご覧ください。
本読み稽古音声データ公開!*ネタバレ注意*